生まれ育った家から歩いて行けるところに片栗の花が咲いているということがわかって、うれしくなった。さっそく、散歩がてら山道をぶらぶら歩いてみた。つづらおりの斜面に可憐な花がやさしくうつむいていた。
その帰り道、道ばたで、女性に懐かしい呼び方で声をかけられた。こどもの頃、同じ学年だった女性だ。近況など、あたりさわりのない会話ののち、それじゃあ。と、別れた。懐かしいといえば懐かしいけれど。こどもの頃も、たいした会話をした記憶がないし、これと言って接点もなかったような気がする。そもそも同じクラスになったことあったかなあ。
ああ、そうだ。たったひとつだけ印象に残っているエピソードがあった。
学校の廊下を歩いているときに向こうからくだんの女性が歩いてきて、ぶつかりそうだったので大きく、スッと横に逸れたら「そんなに避けなくたっていいじゃない」と言われた、というものである。
家に帰って,お茶を飲んで。ひとやすみしているうちに、さらにもうひとつ思い出した。なぜ、大きく避けたのか、その理由だ。
前述のエピソードの数年前、同じクラスだった年があった。席が近かったか、あるいは同じ班だったか。あまりよく覚えていないけれど、確か、よく話をする機会があったのだった。忘れていたけれど。そして、そのときの彼女は何かにつけて、私に厳しくあたっていたのだ。ああ、これはきっと私のことが嫌いなのに違いない。なるべく関わり合いにならないほうがお互いのためだろう。そのため、廊下でぶつかりそうになったときに、スっと大きく避けたのであった。
夜,寝る前に撮影した写真を見ながら、片栗を調べてみた。片栗の種は蟻の幼虫に似た独特の香りを出すのだという。そのため、蟻は幼虫だと勘違いして巣穴に持ち帰り、地中深くに保存される。その種が発芽して、根を伸ばし、やがて花を咲かせるようになるまで、長い長い年月がかかるのだそうだ。
長い年月、忘れていた古い話も、ふとしたきっかけで芽を出すように思い出した春の1日だった。
その帰り道、道ばたで、女性に懐かしい呼び方で声をかけられた。こどもの頃、同じ学年だった女性だ。近況など、あたりさわりのない会話ののち、それじゃあ。と、別れた。懐かしいといえば懐かしいけれど。こどもの頃も、たいした会話をした記憶がないし、これと言って接点もなかったような気がする。そもそも同じクラスになったことあったかなあ。
ああ、そうだ。たったひとつだけ印象に残っているエピソードがあった。
学校の廊下を歩いているときに向こうからくだんの女性が歩いてきて、ぶつかりそうだったので大きく、スッと横に逸れたら「そんなに避けなくたっていいじゃない」と言われた、というものである。
家に帰って,お茶を飲んで。ひとやすみしているうちに、さらにもうひとつ思い出した。なぜ、大きく避けたのか、その理由だ。
前述のエピソードの数年前、同じクラスだった年があった。席が近かったか、あるいは同じ班だったか。あまりよく覚えていないけれど、確か、よく話をする機会があったのだった。忘れていたけれど。そして、そのときの彼女は何かにつけて、私に厳しくあたっていたのだ。ああ、これはきっと私のことが嫌いなのに違いない。なるべく関わり合いにならないほうがお互いのためだろう。そのため、廊下でぶつかりそうになったときに、スっと大きく避けたのであった。
夜,寝る前に撮影した写真を見ながら、片栗を調べてみた。片栗の種は蟻の幼虫に似た独特の香りを出すのだという。そのため、蟻は幼虫だと勘違いして巣穴に持ち帰り、地中深くに保存される。その種が発芽して、根を伸ばし、やがて花を咲かせるようになるまで、長い長い年月がかかるのだそうだ。
長い年月、忘れていた古い話も、ふとしたきっかけで芽を出すように思い出した春の1日だった。
