Kome's DAY DREAM...

ISO-TENGU

ISO-TENGU

子どもの頃、毎年、訪れていたその海は漁港で、磯が広がるばかり。いわゆる海水浴場みたいなものはなくて、テレビで観る白い砂浜に憧れたものだった。

ある年の夏の夕暮れのこと。
その磯辺で、魚を焼いて食べている老人がいた。いや、子どもの目には老人に見えたのだが、今、思い出すと、おじさんだったかもしれない。お兄さんなのかもしれない。ぼんやりとしていて、はっきり思い出せない。印象的だったのは、その人の足や背中をフナムシが這いずりまわっていたこと。フジツボのついたような古びた下駄を履いていたこと。

その後、図書館で観た妖怪図鑑のなかで「磯天狗」というのを知った。名前の通り、磯にあらわれる天狗だという。その人が、磯天狗だという証拠は、どこにもないのだけど、私は、勝手に磯天狗だと思い込んでいる。

いつかまた逢えるだろうか。